スーパーカミオカンデ研究成果公開発表文書                         平成10年6月5日                         スーパーカミオカンデグループ ニュートリノの有限質量の証拠 高山市にて行われる物理学の国際会議(ニュートリノ98)に於いて、我々スーパー カミオカンデ実験グループは、ニュートリノが有限の質量を持つ証拠を見つけたことを 発表する。ニュートリノは中性の素粒子である。本結果に関連する数点の学術論文は、 科学論文誌「フィジカルレビュー」および「フィジクスレター」誌にすでに投稿 されている。この発見は物質の基本構成子と力を記述する素粒子の標準モデルを 越える結果をもたらす。現在まで、ニュートリノが有限の質量を持つことの確実な証拠 は得られていなかった。 この新しい証拠は、宇宙から飛来する高エネルギーの宇宙線が大気に衝突した時に 作られる二次粒子が地表に降り注ぐまでに生成されるニュートリノ(大気 ニュートリノ)の研究によって得られた。大気ニュートリノは地球を難なく通り 過ぎる。スーパーカミオカンデ実験グループは、神岡鉱山の地下1000メートルに、 5万トンの純水をためた巨大な円筒形水槽を使用している。純水中でニュートリノの 反応によって発生した微弱光を、約13000本の「浜松フォトニクス」製の光電子増倍管 によって測定する。 ニュートリノの種類をその種類に固有の反応によって仕分し、ニュートリノ発生点 からの関数としてその反応数を数えることにより、ミュー型ニュートリノが「振動」 している証拠を捕まえた。「ニュートリノ振動」とは、飛行中にニュートリノが違った 種類のニュートリノ間を行き来する現象である。この現象はニュートリノが質量を 持っている時にのみ起る。スーパーカミオカンデの結果はミュー型ニュートリノが 実験装置では観測できないタウ型ニュートリノ(あるいは観測にかからない他の 種類のニュートリノ)に変わっている事を示唆している。実験の結果からは、質量 そのものの値は決定することはできないが、振動している2つの種類の違う ニュートリノの質量差が大変小さいことが帰結される。ここで報告している結果は、 99.994%以上の統計的信頼度がある。また、上記測定とは独立な測定である、測定器 を下から上へ貫通する「上向きミューオン」の測定結果でも、ここで報告している 結果を99.73%以上の信頼度で確認している。 スーパーカミオカンデ実験グループは日本とアメリカの23の研究機関からの 物理学者によって構成されている。主な建設、運転費用は日本の文部省予算によって いる。測定器の外周部(アンタイ層)の費用はアメリカエネルギー省が負担した。 我々は、基礎科学の研究を推進するのみならず、非常に強い日本とアメリカの国際的 パートーナーシップを確立した。 1996年4月からの観測開始以来、スーパーカミオカンデは世界でもっとも感度のよい ニュートリノ観測装置であり、様々な源からのニュートリノを観測している。 我々の観測によれば、太陽からの電子型ニュートリノの観測でも面白い結果が得られ つつある。太陽ニュートリノの強度が、非常に良く確立しているニュートリノ発生を 予言する太陽標準モデルからの予想値に比べて、35%しかない。さらに、我々は、 太陽ニュートリノのエネルギースペクトラムも予想からずれて歪んでいる示唆を得て いる。この太陽ニュートリノ欠損の問題も「もう一つのニュートリノ振動」と解釈 することが可能である。われわれは、このエキサテイングな可能性を追求している。 大気ニュートリノによる新しい発見の帰結として、有限ニュートリノ質量は、 物質構造の理論(素粒子論)に新たに採り入れられなくてはならない、また、 宇宙の暗黒物質の問題に関しても、それらがニュートリノである可能性も考慮されな くてはならない。